2008年 07月 25日
フィリップガストン 元祖イラスト絵画 |
自分の作品の系譜となるであろう作家/作品たちを随分追いかけてきた。その辺りは随分オタッキーなので誰も知らない画家(笑)に辿り着いたりする。
その中にはB級画家もいるのだが隠れた愛すべき画家たちとしてそれも含めていろいろ紹介したい。
私が発表をはじめた頃はニューペインティング旋風はあったものの評価は定着せず、まだまだ国内では具象絵画は遅れた絵と見られていた。やっと奈良美智が少し注目されはじめた頃だ。自分は遅れてきた画家でしかないのか、時代にリアルに向き合うに値するものなのか確かめたくて世界中の具象画家を調べた。今思うと自分なりの系譜を確かめていたのだろうと思う。
当時はこんなに具象絵画が溢れるなんて想像もつかなかった!
巷を跋扈するイラスト絵画とは何だろう。
芸術論やコンセプトの呪縛を逃れて、忘れ去られていたイラスト(挿絵)との復縁したと言える。ここにはデジタル画像の普及も関係しているのだろうし、芸術の大衆化ということもできる。
その本質はさておきこのイラスト絵画の元祖はだれか。
キースヘリング、バゼリッツ、ペンク、バスキアよりもずっと早い人がいる。
それがフィリップガストンだ。実は私も昨年まで知らなかった。
1958年に抽象絵画からコミカルな具象画に転向している。
リキテンスタインが漫画絵画を書きはじめたのが1960年だからそれよりも早い。
抽象表現主義に傾倒した時期を棚上げすると、レジェからの流れを作風から感じる。
リキテンスタインもレジェからの影響を見ることができるし、
レジェがポップアートのルーツと言われるのがわかる。
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Philip Guston , 1947-1979
1913年モントリオールでロシア人移民の家庭に生まれ、その後アメリカに移住したフィリップ・ガストンの展覧会。
初期の作品は、レジェ、キュビスム時代のピカソ、キリコなどの流れを汲む。大恐慌の30年代半ばにNYに住み始め、政府機関からの注文で制作した大きなフレスコ画には、メキシコ壁画の影響が見られる。ガストンは政治問題への関心が強く、人種差別グループKu Klux Klan (KKK) をフレスコ画の題材に選んだ。また、30年代末に出会ったベックマンの作品やピカソのゲルニカから、政治的主張は「芸術」に迎合せずに表現可能だと確信したのだという。
1947年は彼の抽象的傾向が強くなる年である。その頃から50年代までポロック、ロスコ、ニューマンらと、アメリカ抽象表現主義と呼ばれるNY派の中心的存在として活躍し、作曲家フェルドマンやケージとの交流でアジア思想を知る。カリグラフィのような作品にはアジア的要素が見い出せる。しかし1958年には具象形体の意味の喪失に疑問を抱き、再び具象絵画を描き始めるようになるのだった。1970年、コミック風の作品がスキャンダルを巻き起こしている。
都会を離れて田舎で暮らした晩年には、初期の素朴なモチーフが再び姿を表わし、独自のスタイルに到達。ナイーヴな形体が物語を語るようである。(蘭)
http://www.ilyfunet.com/より引用
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この人の影響が国際的にどのように広がっているのかはまだ良くわからないけれど、奈良美智が影響を受けた人の中に彼の名があるから、日本に限ればイラスト絵画のルーツと言ってもいい。美術手帳のニュースなどで小さくは紹介されているがほとんど無視されてきた。作品も国内ではほとんど見たことがない。日本に伝わる情報の偏向がよくわかる。
コミカルな作風とは裏腹な粗いタッチ、大きな画面、重いテーマ、血を連想させるような色調など、ネガティブイメージが色濃く今のイラスト絵画の方法論を予見している。
全貌はまだ良くわかっていないので知りたい画家の一人である。
by kitaibunshi-ms
| 2008-07-25 19:34
| 隠れた画家