2009年 07月 05日
Clan Of Xymox どっこい生きていた耽美派バンド |
コクトーツインズやデッドカンダンスを輩出した4ADというレーベルが結構好きでいろいろ聴いていた。その中でXYMOXというバンドが気になっていた。
不思議なバンド名、Medusaというアルバムタイトルと23envelopsの暗いジャケット、
夢物語という4ADのコンピーレーションアルバムではスピード感あるデジタルビートに陰鬱なメロディを聴かせていて悪くなかった。
こういう耽美系の音は個人か少数でせこせこ打ち込む感じがあうのか、バンド形態は多くなかった。そのなかでバンド形態というのも気になってアルバムを買ってみた。
デッドカンダンスにも通じるこれまた太陽が赤く見えそうな陰鬱なメロディがシンプルなデジタルビートにのり、そこにうねうねと煮え切らない歌が絡むというもの。大仰なストリングスとデジタルビートの組み合わせはヨーロッパの人が好む路線で、ウルトラヴォックスなどの先輩を思わせいい線いきながらもどこかB級の匂いもあった。
耽美路線のこの音なら美声の女性ボーカルでしょうと思うのだが、数曲で女性ボーカルが聴けるものの、あまり特徴のない男性ボーカルが続き、演奏を聴かせるというものではないし、ただ楽曲のメロディラインがとても美しいのが魅力を支えていた。
これはその「Medusa」に入っていた代表曲で彼らにしては比較的明るめの曲で、シンフォニックなメロディが美しい佳曲。
その数枚あとのアルバムではムードを残してはいたがデジタル風のダンスビートに変わっていて特徴も薄くなり、気持ちが離れてしまった。その後、勝手に解散してしまっているだろうと思い込んでいた。
デッドカンダンスをyoutubeで見つけてから、xymoxももしやと思ったら、ありました!
しかも驚くべきことに彼らはゴス系のバンドとしてしっかり生き残っていたのである。オランダを拠点としているらしくツアーリストを見るとそれなりに人気があるようで、南米ツアーの様子などでは熱狂的に歓迎されている。日本での知名度からは想像がつかない。
ほとんど素性を知らないバンドだったのだけれど、少しわかってきた。
Ronnyというボーカル/ギターがリーダーで唯一のオリジナルメンバー。ネクラそうなフロントマントは思えない冴えないムードなのだが、彼がメンバーチェンジに耐えXymoxを守り抜いたのだ。おそらく楽曲の多くは彼が書いているだろうから作曲能力に秀でている。新しい曲でもその辺の魅力が伝わり、一貫性が保たれている。この作曲能力がXymoxの肝だ。
いくつもライブ映像を見るとRonnyがフロントマンとしてそれなりに存在感と人気を示していることがわかるし、そのボーカルも聴き続けるとまあこれも特徴だしいいんじゃないのと思えてきた。
There's no tommorowと歌いながらRonny君はなかなかのしぶとさである。
もうひとつ驚いたのがなんとドラムレスに転向していることである。打ち込みリズムでのライブは今では珍しくないけれど、それでもライブではドラマーを入れることが多いし、ましてやドラマーがいたバンドが打ち込みリズムのライブに転向するのは非常に珍しい。しかも積極的にライブ活動をしているようだ。もともとこのバンドはスタート時からドラマーの存在が薄かったからもとに戻ったということはできる。
ドラムレス、男女混合、デジタルゴス風ライブバンドというなかなかありそうでないバンドがいまのXymoxだ。女性3人擁しての黒ずくめのライブはなかなかイかすじゃないか。
で、なにを思うかというと、一貫性は大事、持続も大事、時代を乗り越える変化も大事ということ。彼らは姿、形は変わってきているけど本質的にはほとんど変わっていない。しかしバージョンアップは必要なのだ。
古典ヨーロッパ調の暗いリリシズムと瞑想的なデジタルダンスビートの組み合わせが基本で、それが楽曲の良さで支えられている。強い特徴はないけれど、他の打ち込み系の音と比べると打ち込み自体は抑制されていていわゆるテクノ臭さが少なく、その辺が消えていったバンドとの差となっている。聞き続けているとスルメのような不思議な魅力があって、時代に名を刻むような革新ではないにしろRonnyの個人的な感性の機微が見え隠れする。
音楽の制作からはずっと離れていたのだけれど、彼らの映像を見ていて、打ち込みへの見方が変わったし、実はずいぶん励まされたのだ。また音楽をやってみてもいいじゃないかと。
ちなみにMojcaという女性ベーシストは中期から二人だけになってもRonnyに同伴し(恋人?)中核メンバーのようで、この人の存在が視覚的にも大きいように思える。美少女だった彼女がある頃から急に貫禄のある大人の女に変わっていくのがとても興味深い。支えた屋台骨は彼女?女性はたくましい。
by kitaibunshi-ms
| 2009-07-05 11:33
| 音楽