2009年 01月 07日
マルチチャンネルペインティング-魔女狩り |
白濱雅也 ShiramaMasaya
魔女狩り アクリル、パネル
ギャラリーNWハウス 1993 220×1320cm
12月の個展では15年前(1993)に制作した作品を彦坂さんの薦めもあり今回再展示しました。コンセプチュアルでメッセージ性の濃い絵画を模索していた頃の作品で、220×1320cmという大作です。
自分でもまだ実物を同一平面に展示した状態は見ていません。画像上ですが一枚に合成しました。音楽で言えば長い組曲のようなものでシミュレーション的複合絵画です。
「パワーインジケーター」のようなこれ以前の複画面絵画では、テレビのチャンネルを変えるような並列感を示していましたが、本作ではこのフォーマットを進めて画面分割を図式化しました。
ギルバートジョージ、ローゼンクイスト、ルッシェ、リキテンシュタイン、インディアナ等のポップアーティスト、サーレ、ロンゴ、フォトリアリスムの画家、ルイスボルツ等の写真などを参考にしています。
具象的絵画の復活を目指し、フォーマルな方法論ではなくブリューゲルや象徴派のような意味構成からの組み立てを現代的イコンを用いて行いました。
そのためオリジナルな技法やタッチを留保し既存の映像や漫画のテクスチャーを採用、テーマ性や構成での成立を試みました。
テーマを設定しそれを言語と記号に置き換えて図式化しそれに象徴的、連想的な画像をはめ込んでいくという工程で、本作の前に1/50の緻密な下図を制作しています。
制作自体はその下図に沿って機械的に拡大されるというもので、この大きさのものを6畳一間のアパートで描いてました。(涙)お金がないのでパネルを自作、直書きです。全貌は画廊に入れるまで分からないし、一つのパートを動かすのもの一苦労という有様でした。
タイトルで分かるように私たちの認識の危うさとそれに伴う差別とその暴力性についての考察がテーマです。
しかし当時そうした意思が全く伝わらないこと、反応がない事に深い挫折感を抱きました。
当時、絵画ではまだ中村一美らの抽象表現主義的な作品への評価が残る中、一種白痴的表現がラディカリズムとしてもてはやされる軽薄短小の時代であり、音楽に例えるならMTV、ダンスビート時代の90年代初頭にプログレの大作をやるようなもので、時代に合わなかったのです。
まだバブルの余韻も濃い時代で享楽の気分が(私自身も含めて)覆っていたのです。
世界を見渡せば悲惨な事もたくさんあり、分野を問わずシリアスな問題性を持った作品を作っている作家達はたくさんいたのですが、そういうものは目立たない時代だったのです。
恐慌の時代と民族闘争の過酷な時代になってこうした表現はまた力を持ってくるのではないと言う予感がします。動向は音楽の方が先行する事が多いですが音楽でもシリアスで複雑なものがヒットすると言う現象も起きて来ています。
そういう目で本作を改めて見ています。
パワーインジケーター アクリル パネル 1994
by kitaibunshi-ms
| 2009-01-07 12:26
| マルチチャンネルペインティング